5 芸術科学会展(Diva ) 紹介
[1]概要
本年度の芸術科学会展には世界中から多くの作品が応募され,以下のように受賞作品が決定致しました.   そして,第5 回芸術科学会展として,作品発表会ならびに表彰式を以下のように開催されます.作品発表会においては,受賞した優秀作品に関して,作者からの作品に関するプレゼンテーションが行われます.
 
また,このたびグランプリを受賞された土佐尚子京都大学教授の特別講演が行われます.
 
なお,本行事は,NICOGRAPH 秋季大会のイベントとして開催されます.


日時: 20071116()
15:30-17:30
受賞作品発表会
17:30-18:20
特別講演土佐尚子先生(京都大学教授)
18:20-20:00
表彰式ならびに懇親会
場所: 東京工業大学すずかけ台キャンバスすずかけホール

[2] 受賞作品一覧

第1部門 インターラクション+ゲーム部門
最優秀賞 
 Stickable Bear
      
有賀 友恒、清水 紀芳、冨田 正浩、杉本 麻樹
    関口 大陸、稲見 昌彦

優秀賞
 silhouetter,三浦 枝里子, 河村 , 中村 正宏,稲葉 剛,玉置 淳,星野 准一
 
 仮想対戦ゲームプレイヤー, 塩入 健太,長谷 将生, 星野 准一
 (本作品は,第2回中山隼雄科学技術文化財団賞のダブル受賞)

第2部門 デジタルシネマ部門

最優秀賞 
  A day in the life of Ayako, ワダナナヒロ

優秀賞
   Spilant world,
三浦 枝里子,中野 敦,河村 仁,星野 准一
   Mind Runner,
 林 賢治


第3部門 セカンドライフ部門
最優秀賞 
   Sim
漆紅,sick

優秀賞
  
芭蕉,「芭蕉」製作実行委員会
  
カラフルエブリデイ,AVENYS

芸術科学会展大賞(グランプリ)受賞
   
Hitch Haiku,
土佐尚子,松岡正剛,Adrian Cheok, Newton Fernando,  尾原秀登

作品展示一覧

Stickable Bear, 有賀友恒,清水紀芳,冨田正浩,杉本麻樹,関口大陸,稲見昌彦
silhouetter, 三浦枝里子,河村仁,中村正宏,稲葉剛,玉置淳,星野准一
「仮想対戦ゲームプレイヤー」, 塩入健太,長谷将生,星野准一
A day in the life of Ayako, ワダナナヒロ
Spilant world, 三浦枝里子,中野敦,河村仁,星野准一


[3]芸術科学会展 担当委員一覧
 

本年度の審査は、以下に示す、各部門ごとの審査長以下、合計の7名により実施された。


NICOGRAPH
秋季大会委員長 中嶋正之(東京工業大学)
芸術科学会展実行委員長 永江孝規(東京工芸大学)
審査委員会委員長 高橋裕樹(電気通信大学)
1部門審査長 モリワキヒロユキ(多摩美術大学)
2部門審査長 春口巌(尚美学園大学)
3部門審査長 深野暁雄(東京工業大学フェロー)
審査委員 羽太謙一(女子美術大学)

 

[4]講評

第1部門 インタラクション+ゲーム部門 
審査長 モリワキヒロアキ(多摩美大)

インタラクションはきわめて身近なものになりつつあるというのが、今回の審査を終えて私の頭のなかを大きく占めた印象だった。応募作品全体を見渡して、ことさらにインタラクションのシステムを主張することなく、自然に導かれるように作品世界に入ってゆけるようなこなれた表現と、さらりと何事もないようにそれを実現してしまう高い技術力の、両面をうまく兼ね備えた作品がそろっているのも、少し以前なら考えられなかったことだ。インタラクション表現のめざましい進歩によって、作品はよりいっそう面白くなっている。同時に制作者によるインタラクションに対する解釈は相当に進んでいて、次世代に向けて来るべきものを見据えようという、意欲を感じさせる内容を持った作品と接することもでき、この分野への興味はますますかき立てられた。

最優秀賞の「Stickable Bear」は、つながることの楽しさ、面白さを素直に表現できている作品だった。これは非常に完成度の高い作品で、おもわず感心してしまった。おそらくかなりの練り込んだ技術の蓄積があることなのであろう。次作品の展開としては、おたがいがつながりあうことで、もたらされる次の世界を想像して見せてくれたらと思う。ここで培われた技術は、そのポテンシャルをじゅうぶんに持っているものと思われる。

 優秀賞の「silhouetter」は、どこか懐かしさをともなう好印象の作品だった。「影」の現象をとりあつかうことは、ごく普通に誰にでもあるような記憶を呼び覚ます体験である。そのような根源的なものに迫ってくる作品であるがゆえに、心の奥底で大事にしているものをあつかっている気分にさせてくれる。それは体験者に不思議な心地よさをともなった高揚感を、感じさせてくれそうな作品だった。

もう一つ優秀賞の「仮想対戦ゲームプレイヤー」は新しいシステムの提案だった。メタゲームとでもいうのか、ゲーム界を見つめるもう一つの暖かい眼がここにはある。作品の表現力は、まだまだこれからという感じだったが、可能性を感じさせるには十分であった。なお、本作品は,第2回中山隼雄科学技術文化財団賞のダブル受賞ということで、おめでとうございます。

 

第2部門 デジタルシネマ部門 

                   審査長 春口巌(尚美大)

受賞された作品作者の皆さん、おめでとうございます。また、受賞されなくても展示上映に値する優秀作品もあり、審査委員会で各審査員の観点から集計した得点の結果、僅差で受賞に至らなかった作品にも応援の声をお送りしたいと思います。コンピュータを使ったデジタル表現だからこそできる作品のあり方という意味ではインタラクティブメディアという表現様式は、実験映像の流れの延長上にある興味深い発展形と考えることもできるでしょう。

A day in the life of Ayakoでは、そのようなインタラクティブメディアの機能を利用して、ストーリーが枝別れのある形で語られる女性の一日の物語で、機能的な面から考えれば近年よくある形式ではありますが、人間臭さのある仕上がりには、メディアテクノロジーに振り回されまいとする作者の表現意欲が読み取れます。

Spilant worldでは、「同時多発のストーリー進行+インタラクティブ性」という発想が注目に値します。ただし、「同時多発」という部分に限ると、この発想自体はそれほど新しいものではありません。インターネット小説を1996年に開始した小説家・筒井康隆も「マンションの各部屋で同時に起こる事件が物語として見える」仕組みの構想について述べています。もっと遡ると、1975年に「30時間市街劇ノック」という形で、阿佐ヶ谷の至る所にある日突然演劇を持ち込む企画を考案した寺山修司には、インタラクティブ性も備えた形でその兆候が見えます。今回の応募作品では、「同時多発+インタラクティブ」表現を鑑賞する楽しさを、すっきりとまとめた高い完成度をもって提示した点が評価されました。

Mind Runnerは、単純なキャラクターデザインでありながら、音楽と映像の緊密な協調性からインパクトの強いエネルギッシュな作品に仕上がっている点が、審査員の好評価を獲得したように思います。

 

第3部門 セカンドライフ部門

審査長 深野 暁雄(東工大フェロー)

今年からの新しい分野ですが、一般には「マシニマ」または「マシネマ」と呼ばれております「ネットワークゲームのプラットフォームを利用した映像」というカテゴリです。

海外では、http://www.machinima.com/http://www.machinima.org/などの研究サイトがすでにあり、多くのコンテンツの発表やコンテストがあります。

国内外でクリエイタが非常に増えており大変期待できます。なにより複雑な3Dソフトを必要とせず、初心者でも参加でき自己表現ができる点と、多人数で協力することが必須で組織力が要求されることも評価になります。

さらにすでにビジネスとして低価格で制作できる映像コンテンツとして、CMなどもマスメディアとして活用されております。

「ネスレ キットカットhttp://www.dailymotion.com/video/x1j2vn_kitkat_ads

「大塚製薬ファイブミニ」http://www.fibe-mini.jp/

さて受賞の講評ですが、最優秀賞の「Sim 漆紅,sick」ですが、非常に優れた作品に仕上がっております。短いながらもドラマ展開は練り込まれていて、今後の謎や分岐するサイドストーリーなども期待できる内容です。

仮想世界の島全体が映像制作スタジオであり、テーマパークとして見学しても楽しめる場でもあり、さらにネットで雄志で集まった面識のないスタッフだけで制作しているというセカンドライフのメリットを生かした内容です。シリーズ化とのことですのでこれからも期待したい作品です。

優秀賞の「芭蕉」ですが、さすがプロの作品です。13分と超大作ですしキャストの多さは驚くべき組織力だと感動しますし、演出も映像制作を解っている玄人の仕事に唸らされます。最優秀でなかった欠点をあげるとすれば「全体のテンポ」と「キャラクターデザイン」でしょうか。

もう1つの優秀賞の「カラフルエブリデイ,AVENYS」ですが、ポップでキュートなアイドルミュージックビデオで非常に完成度が高いものです。たぶん誰もが一度は作ってみたいだろう内容です。しかし、だれでもできる環境のセカンドライフでの可能性を見せながら、決して簡単にはできない玄人の技と表現力・演出力を備えてます。

以上、来年度もぜひ期待したいと思っております。