第9巻 巻頭言(Editor's Message)
新しい価値観が生まれるときには，概して，はじめは誰からも認められなかったり，相手にすらされなかったりすることが多いと思います． 誰も足を踏み入れたことのない新しい道を進むことは，ある意味で，孤独の道を進むこととも言えます．
しかし，そのような苦難があってこそ，それを乗り越えることで，人類は進歩してきたのだと思います． 例えば，１８世紀の半ばにフランクリンが電気の研究を進めた当時，現代の電気に依存した世の中を誰が想像したでしょうか．
コンピュータが世の中に普及して久しく，今日，ネットワーク技術の発展などもあり，コンピュータは人間の生活にとって不可欠なものとなっています． エンターテインメントの分野でも，コンピュータを駆使したＣＧやアニメーション，ゲームなどは，文化のみならず，ビジネスの面でも重要な役割を果たす存在となっています．
さらに，デジタルアートやウェブデザイン，コンピュータ制御によるインスタレーションなど，コンピュータを利用したエンターテインメントは益々活発になりつつあります． ですが，その一方で，まだまだ，そのようなエンターテインメントを一部の特定の人々のホビーとして「単なる無駄なお遊び」と見る世間の目も多いのが事実と思います． この風潮が将来的にどう変わっていくか，現在のところ，私には不明です．
ですが，どんな価値観にせよ，それを育む萌芽期の空気というものは重要であり，芸術科学会論文誌は，論文とデジタルコンテンツの発表という形式を通して，新たな多様なエンターテインメントを暖かく育てていくような場を提供する役割を果たす存在であると私は考えます． 未来に向かって勇気と希望を持って新しい道を進もうとする研究者，技術者，アーティスト等，様々な方々の拠り所として，語らいの場として，幅広い分野から積極的にご参加いただけますよう，今後とも，よろしくお願い申し上げます．
藤本忠博
論文委員長・編集理事
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Last updated: 2010/12/15