第8巻 巻頭言(Editor's Message)

かつて私が従事していたIT業界では、小回りの利くベンチャー企業が新しい発想でビジネスを興し、巨象のような大企業がそれを追いかける、という構図が繰り返されてきました。それはまるで、地球上の生物が、小回りの利く哺乳類の出現、人類の出現、などを大きな転機として進化してきたのに似ているように思います。

芸術科学会論文誌は7年前、まさに哺乳類や人類の出現に似た存在だった、と私は自負しています。動画や音声などのコンテンツファイル添付を推奨する投稿スタイル。まったく郵送物を伴わない電子媒体のみの査読運営。理工学系価値観と芸術学系価値観の融合的な採録基準。現在では他学会でも一般的になりましたが、当時は画期的なものでした。

少なくとも現時点において私は、芸術科学会論文誌は小回りの利くベンチャー企業のような存在であり続けるべきだ、と考えています。そして時代の新しい潮流に応えるように、新しい論文誌のスタイルを追い続けることが、そのアイデンティティの維持につながると考えています。そのためには、固定的・保守的なコミュニティに満足することなく、新しい人的交流を積極的に進めることも重要であると考えます。

芸術科学会では昨年、「エンタテインメントコンピューティング」を共催し、オリジナリティあふれる刺激的な研究成果を発表する機会をつくりました。そして芸術科学会論文誌では、今年から新しく「エンタテインメントコンピューティング特集」を企画し、この分野における独自性の高い研究成果を掲載する機会をつくります。

エンタテインメントこそ、固定的・保守的な概念にとらわれず、自由な発想で新しい学術的潮流を生み出している典型的な分野の一つである、と私は考えます。このようなパワーのある分野との交流から、芸術科学会論文誌が、さらに一皮むけた形で新しいスタイルの論文誌を維持することを、一委員として強く期待する次第です。

伊藤貴之
研究理事


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Last updated: 2009/3/31