学会について

設立趣意書

1 はじめに

「芸術」は大きな力を持っています。一つの作品が広く人間精神に影響を与え、 それが時代の変革の一つの起因となることさえあります。芸術はその時代時代の 精神を反映しているものであるとともに、次の時代の精神を形成する礎ともなり ます。現代に生きる同時代人のすべては、そのような時代の移り変わりを単に 「傍観」するのではなく、次の時代を作っていく作業に何らかの手を貸すことが できる立場にいます。未来は、「現在の同時代人」が「創り出す」ものであると 私たちは考えます。そのための一つの大きな力としての「芸術」が存在していま す。

ここで私たちが使う「芸術」という分類は、旧来の用語法に拘泥するものではあ りません。鑑賞者に対して何らかの感動・感銘・精神的昂揚を与えることのでき る「もの」および「営み」は、すべて「芸術」であると考えられます。そこに は、音楽・演劇・絵画・映画・彫像・文学・舞踏といったものばかりではなく、 コンピュータグラフィックス・ビデオゲーム・アニメーション・コミック・イン スタレーション・ウェブコンテンツ・デジタルミュージック、などまでもが含ま れます。そのように、「芸術」と呼ばれるべき領域が急速に拡大したのが、20世 紀末に生じた一つの画期的な現象であると言えるでしょう。

しかしその一方で、芸術に関しての科学的研究・科学的基礎が、そのような急速 な拡大に十分に追いついていません。科学分野の先端研究が、芸術分野との間に 多くの接点を持っているとは言い難いのが現在の状況です。さらにまた、旧態依 然とした「科学の領域」にこだわるあまり、「快楽」「娯楽」「趣味」などとい った概念に近接した領域であると目されがちな「芸術」を科学的研究の対象とす ることを潔しとしない態度が、一部の科学研究者の中に存在していることもあな がち否定はできません。

より多くの「創作者」「研究者」がこのような認識を共有するとともに、情報を 交換し、かつ啓発しあい、それを個々の活動に反映させるためには、その素地と なる「共通の場」が必要です。そしてその「共通の場」を社会へと開かれた 「窓」にするうえでは、「学会」という形態をとることが最適であると考えまし た。私たちは、芸術と科学の接点を探り、人類の文化創造に貢献するという目的のも と、ここに「芸術科学会」の設立を提案します。

2 本学会の対象とする分野

芸術科学会は、以下の各分野・領域をその対象範囲としています。

1)芸術を科学的側面から研究する諸分野
画像工学・認知科学・心理学・感性工学・情報処理工学・Cultural Studies・文 化社会学、などの領域に分類される研究のうち「芸術」および「芸術的作品」を 対象としたもの。 (ここで言う「芸術」および「芸術的作品」とは、絵画・映画・CG・ゲーム・ アニメーション・音楽・文学・演劇・舞踊・インスタレーション・ウェブ上の作 品、などを広く網羅する概念です)。

2)科学的な手法を基礎において創作された芸術作品
主としてデジタルアートの分野において、新しい手法、ツールなどを用いて作ら れた芸術作品。

3)芸術作品創作の基礎としての科学技術
主としてデジタルアートの分野において、芸術作品を作成する場合の基礎となる 手法やツール・ソフトウェアの開発に関連する分野。

1)4)芸術作品・アート系エンタテインメント作品を対象とする、メディア研究分野
放送・通信などの領域における、作品の流通形態・配信形態に関しての研究。

3 芸術科学会設立準備へのご参加のお願い

芸術科学会は、まだ「これから」の学会です。現在のところ、まだまだ中枢にな っていただける人が不足しています。もちろん、本学会設立の趣意に御賛同いた だける方であれば、分野は問いません。

(芸術科学会は、2000年3月に「設立総会」を予定しております。また、そ れ以前に「設立準備総会」および「設立準備委員会」を予定しています。)

発起人

中嶋 正之(東京工業大学大学院 情報理工学研究科 計算工学専攻)
高橋 裕樹(東京工業大学大学院 情報理工学研究科 計算工学専攻)
斎藤 豪(東京工業大学大学院 情報理工学研究科 計算工学専攻)
戸川 隼人(日本大学理工学部)
千葉 則茂(岩手大学工学部情報工学科)
小沢 慎治(慶應義塾大学 理工学部 情報工学科)
斎藤 英雄(慶應義塾大学 理工学部 情報工学科)
大野 義夫(慶應義塾大学 理工学部 情報工学科)
近藤 邦雄(埼玉大学 工学部 情報システム工学科)
宮井 あゆみ(CG-ARTS 協会 第一企画部部長)
秋葉 俊幸(CG-ARTS 協会 専務理事)
宮田 一乘(東京工芸大学・芸術学部・映像学科・デジタル研究室)
春口 巌(東京造形大学)
土佐 尚子(ATR知能映像通信研究所)
今間 俊博(イマジカ)
野地 朱真(電子学園総合研究所)
新井 清志(Fuji Television Network, Inc.)
奥山 健一(東京基礎研究所.日本IBM(株))
西井 育夫((株)リンクス 制作部)
恩田 憲一(尚美学園短期大学)
高田 明典(尚美学園短期大学)
三野 裕之(尚美学園短期大学)
永江 孝規(尚美学園短期大学)

(各所属は設立時のもの)